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油圧機器の制御装置

申请号 JP2017090322 申请日 2017-04-28 公开(公告)号 JP2017138005A 公开(公告)日 2017-08-10
申请人 ジヤトコ株式会社; 日産自動車株式会社; 发明人 竹平 陽介; 河住 拓郎;
摘要 【課題】エンジン始動時に駆動トルクが油圧ポンプに伝達される際のサージ圧の発生を抑止して、油圧ポンプや油圧装置の負荷を軽減し、耐久性を向上させる。 【解決手段】エンジンで駆動されるオイルポンプ11を油圧供給源として作動する油圧機器の制御装置であって、エンジンとオイルポンプ11との間に介装されたクラッチ4と、エンジンの作動中に、油圧機器6の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するようにクラッチ4に指令を出 力 する第1の指令部103aaと、エンジンの始動時に、第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で締結するようにクラッチ4に指令を出力する第2の指令部103abとを有し、エンジン停止時間が所定時間経過した後にエンジンが始動されると第2の指令部103abが指令を出力し、エンジン停止時間が所定時間経過する前にエンジンが始動されると第1の指令部103aaが指令を出力する。 【選択図】図1
权利要求

エンジンにより駆動されるオイルポンプを油圧供給源として作動する油圧機器の制御装置であって、 前記エンジンと前記オイルポンプとの間に介装されたクラッチと、 前記エンジンの作動中に、前記油圧機器の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出する第1の指令部と、 前記エンジンの始動時に、前記第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力する第2の指令部と、を有し、 前記エンジンの停止時間が所定時間を経過してから前記エンジンの始動が行なわれると、前記第2の指令部が、前記第2必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力し、前記エンジンの停止時間が前記所定時間を経過する前に前記エンジンの始動が行なわれると、前記第2の指令部による指令を出力することなく、前記第1の指令部が、前記エンジンの始動時から前記第1必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力する ことを特徴とする、油圧機器の制御装置。前記オイルポンプの連続非作動時間が長いほど、前記第2必要トルク容量が低下される ことを特徴とする、請求項1記載の油圧機器の制御装置。前記オイルポンプのオイルの油温が低いほど、前記第2必要トルク容量が低下される ことを特徴とする、請求項1又は2記載の油圧機器の制御装置。気温が低いほど、前記第2必要トルク容量が低下される ことを特徴とする、請求項1又は2記載の油圧機器の制御装置。前記クラッチの解放を指示する場合に、指示値をスイープして前記クラッチを制御するクラッチ制御部に出力する第3の指令部と、 前記オイルポンプの回転数と前記エンジンの回転数との関係から前記クラッチが完全締結状態からスリップ状態に移行したことを判定する判定部と、 前記判定部により判定した前記スリップ状態への移行時の前記オイルポンプの駆動トルクから前記移行時の前記クラッチのトルク容量を推定する推定部と、 前記推定部により推定した前記トルク容量に基づき、前記第2必要トルク容量を補正する補正部とを有する ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の油圧機器の制御装置。前記補正部は、前記エンジンの始動後の1回目の前記クラッチの解放時に、前記第2必要トルク容量の補正を行なう ことを特徴とする、請求項5記載の油圧機器の制御装置。前記第2の指令部は、前記第1必要トルク容量が容量閾値を超える場合には、前記エンジンの始動時に、前記第2必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力する前に、前記第2の指令部による出力に対する前記オイルポンプの圧力上昇の応答遅れに応じた時間だけ、前記第2必要トルク容量よりも大きい第3必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力する ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の油圧機器の制御装置。前記油圧機器は、変速機を油圧により作動させる変速機用油圧装置である ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の油圧機器の制御装置。

说明书全文

本発明は、自動車用変速機に用いて好適の油圧機器の制御装置に関するものである。

近年、自動車において、運転条件に応じてエンジンの停止及びエンジンの再始動を行なうアイドルストップ制御により燃費を向上させる技術が開発されている。このアイドルストップ制御において、エンジン停止時には、エンジン駆動のオイルポンプの停止により、変速機の発進クラッチの油室の油圧が抜けて発進クラッチが解放状態になるため、エンジンの再始動時には発進クラッチの油室に油圧を供給して発進クラッチを締結する。

しかし、エンジン始動にエンジン駆動のオイルポンプからの油圧の立ち上がりが遅れ、かつ、オイルポンプの起動直後は吐出圧が不安定であるため、エンジン再始動に同期して発進クラッチへの油圧供給制御(締結処理)を開始すると、急激な締結油圧の増大などによって締結ショックが生じる可能性がある。 かかる課題に着目し、特許文献1には、アイドルストップからエンジンを再始動させるときに、エンジン回転速度又は検出油圧が基準値に達した時点、又は、油圧スイッチのオン・オフが切り替わった時点から、更に基準時間が経過した時点で、動作油圧が所定の油圧に達したと判定し、この判定後に、発進クラッチの締結処理を開始させる技術が記載されている。

特開2009−191997号公報

上述の特許文献1の技術によれば、オイルポンプからの油圧供給が不足する状態で発進クラッチの締結が開始されることが回避されるので、油圧制御によって滑らかに油圧を変化させることが可能となり、発進ショックを回避することができる。しかしながら、この技術によっても、エンジンの始動時に生じるサージ圧の油圧機器への影響は回避することができない。

つまり、エンジン始動時には、エンジンのクランキング後の回転速度の急上昇に伴いオイルポンプにより発生する油圧が急激に上昇し、いわゆるサージ圧が発生する。このサージ圧は、発進クラッチの締結処理とは無関係に、オイルポンプに直に連通する油圧機器の油圧回路等へ直接作用するため、油圧機器のサージ圧を受ける箇所には大きな負荷が加わり、油圧機器の耐久性を低下させるおそれが生じる。

本発明は、かかる課題に鑑み創案されたもので、エンジン始動時におけるオイルポンプによる油圧の急上昇(いわゆる、サージ圧)を抑制して、油圧負荷による油圧機器の耐久性低下を抑制することができるようにした、油圧機器の制御装置を提供することを目的とする。

(1)上記の目的を達成するために、本発明の油圧機器の制御装置は、エンジンにより駆動されるオイルポンプを油圧供給源として作動する油圧機器の制御装置であって、前記エンジンと前記オイルポンプとの間に介装されたクラッチと、前記エンジンの作動中に、前記油圧機器の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出する第1の指令部と、前記エンジンの始動時に、前記第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力する第2の指令部と、を有し、前記エンジンの停止時間が所定時間を経過してから前記エンジンの始動が行なわれると、前記第2の指令部が、前記第2必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力し、前記エンジンの停止時間が、前記所定時間を経過する前に前記エンジンの始動が行なわれると、前記第2の指令部による指令を出力することなく、前記第1の指令部が、前記エンジンの始動時から前記第1必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力することを特徴としている。

(2)前記オイルポンプの連続非作動時間が長いほど、前記第2必要トルク容量が低下されることが好ましい。この場合、例えば、前記オイルポンプの連続非作動時間が前記所定時間よりも長い第2の所定時間を経過してから前記エンジンの始動が行なわれると、前記オイルポンプの連続非作動時間が前記第2の所定時間を経過する前に前記エンジンの始動が行なわれる場合よりも前記第2必要トルク容量が低下されるようにしても良い。

(3)前記オイルポンプのオイルの油温が低いほど、前記第2必要トルク容量が低下されることが好ましい。この場合、例えば、前記オイルポンプのオイルの油温が所定油温未満の場合には、前記オイルの温度が前記所定油温以上の場合よりも前記第2必要トルク容量が低下されるようにしても良い。 (4)気温が低いほど、前記第2必要トルク容量が低下されることが好ましい。この場合も、例えば、気温が所定気温未満の場合には、前記気温が前記所定気温以上の場合よりも前記第2必要トルク容量が低下されるようにしても良い。

(5)前記クラッチの解放を指示する場合に、指示値をスイープして前記クラッチを制御するクラッチ制御部に出力する第3の指令部と、前記オイルポンプの回転数と前記エンジンの回転数との関係から前記クラッチが完全締結状態からスリップ状態に移行したこと判定する判定部と、前記判定部により判定した前記スリップ状態への移行時の前記オイルポンプの駆動トルクから前記移行時の前記クラッチのトルク容量を推定する推定部と、前記推定部により推定した前記トルク容量に基づき、前記第2必要トルク容量を補正する補正部とを有することが好ましい。

(6)前記補正部は、前記エンジンの始動後の1回目の前記クラッチの解放時に、前記第2必要トルク容量の補正を行なうことが好ましい。

(7)前記第2の指令部は、前記第1必要トルク容量が容量閾値を超える場合には、前記エンジンの始動時に、前記第2必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力する前に、前記第2の指令部による出力に対する前記オイルポンプの圧力上昇の応答遅れに応じた時間だけ、前記第2必要トルク容量よりも大きい第3必要トルク容量で締結するように前記クラッチに指令を出力することが好ましい。

(8)前記油圧機器として、変速機を油圧により作動させる変速機用油圧装置を適用することができる。

(1)本発明の油圧機器の制御装置によれば、エンジンの作動中には、第1の指令部が、油圧機器の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力するので、油圧機器を確実に作動させることができ、エンジンの始動時には、第2の指令部が、第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力するので、エンジンの出力トルクが大きくなったり、エンジンの回転数が高くなったりしても、クラッチが滑りオイルポンプの回転数の急上昇が抑えられ、オイルポンプの油圧の急上昇(いわゆる、サージ圧)を抑制することができる。これにより、油圧負荷による油圧機器の耐久性低下を抑制することができるようになる。

例えば、アイドルストップのような短時間でエンジンを再始動する場合には、油圧機器内やオイルポンプ内にオイルが残存しており、サージ圧は発生しないか発生しても油圧機器の各部に大きな負担を与えないが、ドライバが車両に乗車してから始動を行なう一般的なエンジン始動時には、油圧機器内やオイルポンプ内にオイルが残存しておらず、サージ圧が発生し油圧機器の各部に大きな負担を与える。このため、これら2種類のエンジン始動を判別できるように、所定時間(例えば数分程度)を設定し、エンジンの停止時間が所定時間を経過してからエンジンの始動が行なわれる通常のエンジン始動時には、第2必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力し、エンジンの停止時間が所定時間を経過する前にエンジンの始動が行なわれるアイドルストップのような短時間でのエンジン再始動時には、始動当初から第1必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力することにより、必要な場合のみサージ圧の抑制対策がなされサージ圧が抑制され、不要なサージ圧の抑制対策による油圧の立ち上がりの遅れを回避することができる。

(2)オイルポンプの連続非作動時間が長いほど、油圧機器内のオイルが減少するので、オイルポンプによるサージ圧の影響が油圧機器の各部により大きな負担となる。この場合、第2必要トルク容量を低下させるので、クラッチの滑りが促進されオイルポンプによるサージ圧の発生がより抑えられ、油圧機器の各部の負担を軽減しその耐久性低下を抑制することができるようになる。

(3,4)また、気温が低い場合などには油温が低くなるほど、オイルの粘性が高くなり、オイルポンプによるサージ圧が発生すると、油圧機器の各部により大きな負担となる。この場合も、第2必要トルク容量を低下させるので、クラッチの滑りが促進されオイルポンプによるサージ圧の発生がより抑えられ、油圧機器の各部の負担を軽減しその耐久性低下を抑制することができるようになる。

(5)クラッチの解放を指示する場合に、指示値をスイープしてクラッチを制御し、オイルポンプの回転数とエンジンの回転数との関係からクラッチが完全締結状態からスリップ状態に移行したことを判定し、判定したスリップ状態への移行時のオイルポンプの駆動トルクから移行時のクラッチのトルク容量を推定し、推定したトルク容量に基づき、第2必要トルク容量を補正すれば、クラッチの個体差によるバラつきや経年変化などによるトルク容量の差異を補正することができ、クラッチのトルク容量が不足したり過剰になったりすることなく適正に制御することができる。

(6)エンジンの始動後の1回目の前記クラッチの解放時に、第2必要トルク容量の補正を行なうと、その後の走行において、この補正された指示値でクラッチの締結が行なわれるので、サージ圧を適正に抑制しつつ、クラッチのスリップによる油圧不足を制御することができる。 (7)第1必要トルク容量が容量閾値を超える場合に、第2必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力する前に、オイルポンプの圧力上昇の応答遅れに応じた時間だけ、第2必要トルク容量よりも大きい第3必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力することにより、油圧ポンプの急激な圧力上昇を招くことなくクラッチを速やかに係合させて、クラッチの滑りを利用しながらクラッチの係合トルクを広い範囲で制御することができるようになる。

(8)本装置を、変速機を油圧により作動させる変速機用油圧装置に適用すれば、変速機用油圧装置の各部の負担を軽減しその耐久性低下を抑制することができるようになる。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置を備えた油圧装置を示す構成図である。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置に装備されるクラッチを示す縦断面図である。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置に装備されるクラッチの作動原理を説明するクラッチ締結状態の図であり、(a)はその要部縦断面図で、(b)はカムの作動状態を示す模式図である。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置に装備されるクラッチの作動原理を説明するクラッチ解放状態の図であり、(a)はその要部縦断面図で、(b)はカムの非作動状態を示す模式図である。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置のクラッチに適用される電磁クラッチの電流値に対するトルク特性図(図5(a))及び発生油圧に対するトルク対応図(図5(b))である。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置に装備されるクラッチの係合時の油圧の状態(指示圧,実圧)、トルクの状態(クラッチ係合トルク容量、油圧ポンプ駆動トルクの理論値及び実値)、回転状態(エンジン回転数,ポンプ回転数)、油圧ポンプへの指示電流値、の各変化を示すタイムチャートである。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御におけるクラッチ解放を用いたクラッチ劣化学習制御を説明するトルクの状態(クラッチ係合トルク容量の支持値及び実値)、回転状態(エンジン回転数,ポンプ回転数)のタイムチャートである。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御におけるクラッチ解放を用いたクラッチの劣化学習制御を説明する電磁クラッチのトルク特性図である。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置による制御を説明するフローチャートである。

本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置による制御を説明するフローチャートである。

本発明の第2実施形態にかかる油圧機器の制御装置を備えた油圧装置を示す構成図である。

本発明の第2実施形態にかかる油圧機器の制御装置のクラッチに適用される油圧クラッチの制御油圧に対するトルク特性を示す図である。

本発明の第2実施形態にかかる油圧機器の制御装置による制御を説明するフローチャートである。

本発明の第2実施形態にかかる油圧機器の制御装置による制御を説明するフローチャートである。

以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。 図1〜図10は第1実施形態を説明する図であり、図1はその油圧機器及びその制御装置を説明する図、図2〜図4はその電磁クラッチを説明する図、図6〜図8はその制御を説明するタイムチャート、図9,図10はその制御を説明するフローチャートである。また、図11〜図14は第2実施形態を説明する図であり、図11はその油圧機器及びその制御装置を説明する図、図12はその制御油圧に対するトルク特性を示す図、図13,図14はその制御を説明するフローチャートである。

〔第1実施形態〕 <装置構成> まず、本実施形態にかかる油圧機器及びその制御装置の構成を説明する。 図1に示すように、本油圧機器は、車両に搭載された無段変速機(CVT)のプライマリプーリ及びセカンダリプーリの可動プーリの油圧室等の油圧要求部に油圧を供給する変速機用油圧装置である。この油圧装置には、車両に装備された図示しないエンジン(内燃機関)により駆動されるオイルポンプ(油圧ポンプ、O/Pとも表記する)11をそなえている。

なお、ここでは、オイルポンプ11はエンジンの出力軸1にチェーン機構3及び電磁クラッチが用いられたポンプクラッチ(以下、電磁クラッチという)4を介して接続され、電磁クラッチ4を介してエンジンの出力トルクが入力されて駆動される。なお、電磁クラッチ4は、電流指示ドライバ4Aが接続され、電流指示ドライバ4Aによって作動を制御される。

チェーン機構3は、エンジンの出力軸1に接続されたトルクコンバータ5のポンプインペラ5aの軸5bに固定されたスプロケット3aと、電磁クラッチ4の入力軸であるオイルポンプ11の回転軸(ポンプシャフト)41に固定されたスプロケット3bと、スプロケット3aとスプロケット3bとに掛け回されたチェーン3cとからなる。 トルクコンバータ5のタービンランナ5cには、CVT6のプライマリ軸(変速機入力軸)61が一体に接続され、プライマリ軸61には、可動プーリ62a及び固定プーリ62bからなるプライマリプーリ62が一体回転するように接続されている。プライマリ軸61と平行にセカンダリ軸(変速機出力軸)63が備えられ、セカンダリ軸63には、可動プーリ64a及び固定プーリ64bからなるセカンダリプーリ64が一体回転するように接続されている。プライマリプーリ62とセカンダリプーリ64とに、ベルト(チェーンも含む)65が掛け回され、可動プーリ62a,64aの軸方向位置に応じた変速比で、プライマリ軸61の回転がセカンダリ軸63に伝達され、さらに、図示しない車両の駆動輪に伝達される。

可動プーリ62a,64aには、それぞれに隣接して油圧室66a,66bが設けられ、油圧室66a,66bには、オイルポンプ11によって加圧されたオイル(作動油)が、油圧コントロールユニット7によってライン圧に調圧されて供給され、可動プーリ62a,64aの軸方向位置が制御されて、プライマリプーリ62とセカンダリプーリ64との実質的な半径(有効半径)が調整される。油圧コントロールユニット7は可動プーリ62a,64aの移動のためのオイル供給だけでなく、その他の油圧作動機器類にもオイル供給をする。

このようなCVT6の油圧コントロールユニット7、及び電磁クラッチ4の電流指示ドライバ4Aは、CVTCU[CVTコントロールユニット(制御手段)]10により制御される。なお、CVTCU10は周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置である。 CVTCU10は、アクセルポジションセンサからのアクセルペダル踏込量App,プライマリプーリ回転数センサからのプライマリプーリ回転数Npp,セカンダリプーリ回転数センサからのセカンダリプーリ回転数Nsp等の情報が入力され、これらの情報や、図示しないエンジンコントロールユニットからの入力トルク情報に基づいて、変速比(セカンダリプーリ64の有効半径をプライマリプーリ62の有効半径で除した値)やベルト65の接触摩擦力を決定し、油圧コントロールユニット7に指令を送信して、CVT6を制御する。なお、「回転数」は単位時間当たり(例えば1分あたり)の回転数であって、回転速度に相当する。

油圧コントロールユニット7は、種々のバルブが組み込まれて油圧回路の要部を構成するバルブボディ(図示略)を備え、バルブボディ内には、プレッシャレギュレータバルブ(ライン圧調圧弁),変速制御弁(プライマリ圧調圧弁),セカンダリバルブ(セカンダリ圧調圧弁),及びパイロットバルブ等が備えられている。 プレッシャレギュレータバルブは、オイルポンプ11から供給された吐出圧の一部をドレンすることでライン圧として調圧する。変速制御弁は、メカニカルフィードバック機構を構成するサーボリンクの作動に応じて実変速比のフィードバックを受けてライン圧を減圧してプライマリプーリ62の油圧室66aへ供給する。セカンダリバルブは、CVTCU10の制御により、ライン圧を減圧してセカンダリプーリ64の油圧室66bへ供給する。

ここで、電磁クラッチ4を説明する。 電磁クラッチ4は、図2に示すように、ベアリング41aを介してスプロケット3bを回転自在に支持するポンプシャフト41と、ポンプシャフト41に対して一体回転し且つ軸方向に可動に装着されたアーマチュア42と、アーマチュア42におけるスプロケット3bの一面(係合面)3dと対向する一面に突設され係合面3dと摩擦係合可能な摩擦面42aと、摩擦面42aが係合面3dに接触する方向にアーマチュア42を付勢する付勢機構43と、アーマチュア42を摩擦面42aが係合面3dから離隔する方向に磁力により吸引する電磁吸引機構44とを備えている。

付勢機構43は、カム機構45と、カム機構45を介してアーマチュア42をスプロケット3bに向けて押圧する押圧部材43aと、押圧部材43aをアーマチュア42に向けて弾性的に押圧する弾性部材43bとを備えている。本実施形態では、弾性部材43bは、押圧部材43aの背面と支持壁面46との間に介装された皿バネにより構成される。押圧部材43aの背面と支持壁面46との間の距離が近づくほど皿バネ43bは大きな弾性力により押圧部材43aをアーマチュア42に向けて押圧する。

カム機構45は、図2〜図4に示すように、アーマチュア42の他面(被押圧面)に形成されたカム溝45aと、押圧部材43aの前面(押圧面)に形成されたカム溝45bと、両カム溝45a,45b間に介装されたボール45cとからなる。カム溝45a,45bは何れも断面V字状に形成され、スプロケット3bとアーマチュア42とが接触すると、両者間でトルク伝達が開始され、このトルク伝達の開始に伴って押圧部材43aとアーマチュア42との間に捻じり力が生じる。これにより、両者間に回転位相差が生じることになり、ボール45cがカム溝45a,45bを離隔させるため、皿バネ43bが押圧部材43aをアーマチュア42に押圧する弾性力が大きくなり、捻じり力に応じて大きなトルク伝達が可能になる。

電磁吸引機構44は、アーマチュア42に隣接して装備されたヨーク44aと、アーマチュア42の他面に対向するようにヨーク44a内に装備されたコイル44bとを有し、コイル44bに電流が供給されると、電流値に応じた磁力によってアーマチュア42を吸引する。逆に、コイル44bに電流が供給されなければ、アーマチュア42は電磁吸引機構44で吸引されないため、アーマチュア42は付勢機構43によってスプロケット3bと圧接し、電磁クラッチ4は結合状態となる。したがって、電磁クラッチ4は、所謂ノーマルクローズタイプのものである。

かかる電磁クラッチ4では、電磁吸引機構44による電磁吸引力Fmが付勢機構43による付勢力Fs未満であれば(Fs>Fm)、図3に示すように、アーマチュア42の摩擦面42aがスプロケット3bの係合面3dに接触し、電磁クラッチ4によるトルク伝達が行なわれる。このときの電磁クラッチ4による伝達トルクの大きさTtは次式(1)のようになる。 Tt=μ×r×a×(Fs−Fm)〔Nm〕・・・(1) ただし、 μ:スプロケット係合面3dとアーマチュア摩擦面42aとの摩擦係数 r:スプロケット係合面3dとアーマチュア摩擦面42aとの摩擦面の有効半径 a:カム機構45によるトルク増幅率(3〜10倍程度) 一方、電磁吸引機構44による電磁吸引力Fmが付勢機構43による付勢力Fsよりも大きくなると(Fm>Fs)、図4に示すように、アーマチュア42の摩擦面42aはスプロケット3bの係合面3dから離隔する。したがって、電磁クラッチ4によるトルク伝達はなされず、伝達トルクは0となる(Tt=0)。

したがって、Fs>Fmの範囲で、電磁吸引機構44による電磁吸引力Fmを調整すれば、電磁クラッチ4による伝達トルクを制御することができる。電磁吸引力Fmの調整はコイル44bへの供給電流の大きさで行なうことができるので、電磁クラッチ4の伝達トルクを電磁吸引機構44への供給電流により調整することができる。電磁吸引機構44のコイル44bへの供給電流を0にすれば、電磁クラッチ4による伝達トルクTtは最大になる。

ただし、一般に、摩擦クラッチは、係合状態から解放状態への移行時には、滑り摩擦状態で係合トルクが徐々に低下して0に減少するが、解放状態から係合状態への移行時には、通常、係合時に係合部材間(スプロケット3bとアーマチュア42の間)に回転速度差があるので、接触係合した段階で一定以上の係合トルクが発生し、その後は、係合トルクが徐々に増加する。

このため、摩擦クラッチを利用する電磁クラッチ4も、図5(a)に示すように、電磁吸引機構44への供給電流を増大させて係合状態から解放状態への移行させる時と、電磁吸引機構44への供給電流を減少させて解放状態から係合状態への移行させる時とでは、係合トルクは一部異なるルートで変遷する。つまり、係合状態から解放状態への移行時には、図5(a)に実線で示すように、供給電流を増大させていくと滑り摩擦状態で係合トルクが徐々に低下して0に減少するが、解放状態から係合状態への移行時には、図5(a)に破線で示すように、供給電流を減少させていくとある段階で接触係合し、この段階で一定以上の係合トルクとなって、その後は、供給電流の減少に応じて係合トルクが徐々に増加する。

なお、この電磁クラッチ4の係合トルクと、オイルポンプ11で発生する油圧とは、例えば図5(b)に示すような対応関係がある。図5(b)に示す例は、最もシンプルに線形の関係にあるが、かかる係合トルクと油圧との関係は線形とは限らないが、係合トルクが大きいほど発生する油圧も高くなる。 したがって、CVTCU10は、この特性を考慮して、電磁クラッチ4による伝達トルクを制御するようになっている。

特に、電磁クラッチ4を係合させる際に、スプロケット3bからアーマチュア42を通じて電磁クラッチ4からオイルポンプ11に瞬時に大きなトルクが加わる場合があり、サージ圧が生じる場合がある。CVTCU10のクラッチ制御部103は、電磁クラッチ4を係合させる際に、このサージ圧を抑制するために、特有な制御を実施する。

<制御構成> ここで、電磁クラッチ4を係合させる際のCVTCU10による制御を説明する。 CVTCU10には、電磁クラッチ4に関連する制御機能として、車両の走行状態に応じて目標油圧を算出する油圧算出部101と、電磁クラッチ4の締結によりメカオイルポンプ11を作動させるときに目標油圧を発生するのに必要な電磁クラッチ4の伝達トルク容量を設定する伝達トルク容量設定部102と、メカオイルポンプ11が油圧算出部101により算出された目標油圧を発生するように電磁クラッチ4の伝達トルク容量を制御するクラッチ制御部103と、を備えている。

油圧算出部101では、車両の走行状態に応じて目標油圧としてのライン圧を算出する。つまり、CVT6では、エンジンの出力トルクを伝達する際に各プーリ62,64とベルト65との間に滑りが生じないように、エンジンの出力トルクや各プーリ62,64の有効半径等に応じてライン圧を設定する必要がある。エンジンの出力トルクはエンジン回転数Ne及びエンジン負荷から算出できる。このような観点から、油圧算出部101では、エンジンの出力トルクを伝達する際に各プーリ62,64とベルト65との間に滑りが生じないように、エンジンの出力トルクや、エンジン回転数Ne、エンジン負荷に相当するスロットル開度Tvo、変速比等に応じてライン圧を設定する。

伝達トルク容量設定部102では、ライン圧(目標油圧)を発生するのに必要なオイルポンプ11の駆動トルクを算出し、この駆動トルクに基づいて、オイルポンプ11を作動させるとき必要な電磁クラッチ4の伝達トルク容量(第1必要トルク容量)を設定する。この伝達トルク容量は係合トルクに対応し、係合トルクTeは次式(2)で与えられる。 Te=PLD×QOP/2π+Ne×α・・・(2) ただし、 PLD:ライン圧指示値〔MPa〕 QOP:オイルポンプ11の固有吐出量〔cc/rev〕 Ne:エンジン回転数〔rev/min〕 α:比例定数 オイルポンプ11の駆動トルクがこの電磁クラッチ4の伝達トルク容量(係合トルクTeに対応)に支配される場合には、オイルポンプ11の駆動トルクTOPもこの係合トルクTeと等しくなる。

クラッチ制御部103は、電磁クラッチ4に指令を出力する指令部103aを備えている。指令部103aは、電磁クラッチ4の供給電流を制御する電流指示ドライバ4Aに供給電流の指示値を出力することにより電磁クラッチ4を制御するが、指令部103aは、第1の指令部103aaと第2の指令部103abと第3の指令部103acとの3つの機能を有している。第3の指令部103acは後述する。

第1の指令部103aaは、エンジンの作動中に、変速機用油圧装置の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量(電磁クラッチ4による係合トルクTeに対応する)で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力する。具体的には、伝達トルク容量設定部102により設定された伝達トルク容量に応じた第1の指令値である電流指示値(最終指示値)を電磁クラッチ4の電流指示ドライバ4Aに出力する。

第2の指令部103abは、エンジンの始動時に、所定条件下で、第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力する。この第2必要トルク容量に応じた指令の出力は、エンジンの始動が完了した時点から予め設定された所定期間だけ実施し、その後は、第1の指令部103aaにより、第1必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力する。

このように、エンジンの始動時に、第1必要トルク容量よりも低い第2必要トルク容量で電磁クラッチ4を締結させるのは、オイルポンプ11による油圧の急上昇(いわゆる、サージ圧)を抑制するためである。したがって、第2必要トルク容量は、このサージ圧を抑制することができる大きさに抑えることが必要であり、第2必要トルク容量の大きさ(或いは、上記所定量)は、サージ圧を抑制する観点から設定される。

ここで、所定条件とは、オイルポンプの連続非作動時間が所定時間tt1を経過してからエンジンの始動が行なわれたことである。 例えば、エンジンECUや車両ECUを通じて行なわれるアイドルストップのような短時間でエンジンを再始動する場合には、油圧機器内やオイルポンプ内にオイルが残存しており、サージ圧は発生しないかサージ圧が発生しても油圧機器の各部に大きな負担を与えないが、ドライバが車両に乗車してから始動を行なう一般的なエンジン始動時には、油圧機器内やオイルポンプ内にオイルが残存しておらず、サージ圧が発生し油圧機器の各部に大きな負担を与える。

このため、これら2種類のエンジン始動を判別できるように、所定時間tt1(例えば数分程度)を設定し、エンジンの停止時間が所定時間tt1を経過してからエンジンの始動が行なわれる通常のエンジン始動時には、サージ圧抑制期間だけ、第2の指令部103abが第2必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力し、エンジンの停止時間が所定時間tt1を経過する前にエンジンの始動が行なわれるアイドルストップのような短時間でのエンジン再始動時には、第1の指令部103aaが始動当初から第1必要トルク容量で締結するようにクラッチに指令を出力する。これにより、必要な場合のみサージ圧の抑制対策がなされ、不要なサージ圧の抑制対策による油圧の立ち上がりの遅れを回避することができるようにしている。また、アイドルストップ制御によるエンジン停止であっても、停止時間が長ければ、第2の指令部103abにより第2必要トルク容量で締結するようにクラッチを制御してもよい。これにより、長時間のアイドルストップによる長時間のエンジン停止で、油圧機器内やオイルポンプ内のオイルの残存量が低下しても、サージ圧の発生を抑制することができる。

なお、第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力することは、具体的には、伝達トルク容量設定部102により設定された伝達トルク容量に応じた第1の指令値である電流指示値(最終指示値)よりも、伝達トルク容量が小さい第2の指令値(過渡指示値)を電磁クラッチ4の電流指示ドライバ4Aに出力することである。

また、第2必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力するサージ圧抑制期間とは、固定した時間或いは固定した期間(例えば、エンジンの累積回転数)とする。この固定の時間或いは期間は、第2必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力することにより、オイルポンプ11による実圧が指示圧(第1必要トルク容量)へ収束するまでに要する時間或いは期間を試験結果等に基づいて推定し、この推定結果から設定している。

本実施形態では、電磁クラッチ4がノーマルクローズタイプのものである。エンジンの停止時には、節電のため電磁クラッチ4への通電は遮断されているため、電磁クラッチ4は締結状態であり、第2の指令部は、エンジンの始動時には、一旦電磁クラッチ4を通電して電磁クラッチ4を解放状態にしてから、電磁クラッチ4の締結を制御する。 ここで、第2必要トルク容量について説明する。前述のように、第2必要トルク容量は、サージ圧の発生を抑制することができる大きさに抑える必要があり、サージ圧の発生のおそれが高い状況ほど、第2必要トルク容量の大きさ(或いは、上記所定量)を低く設定し、より確実に、サージ圧の発生を抑制できるようにしている。

サージ圧の発生のおそれが高くなる状況としては、オイルポンプ11が長い時間停止している状況や、オイルが低温でオイル粘度が高い状況が挙げられる。 そこで、本実施形態では、オイルポンプ11の連続非作動時間が長いほど、第2必要トルク容量を低下させている。ここでは、連続非作動時間が長いほど小さくなる1未満の係数(非作動時間対応係数)C1を、算出した連続非作動時間に基づいて設定し、第2必要トルク容量の基本値にこの係数C1を乗算して第2必要トルク容量を補正するようにしている。

なお、オイルポンプ11の連続非作動時間が第2所定時間tt2を経過してからエンジンの始動が行なわれると、連続非作動時間が第2所定時間tt2を経過する前にエンジンの始動が行なわれる場合よりも第2必要トルク容量を低下させるように、第2必要トルク容量を連続非作動時間に対しシンプルに2段階に調整するようにしてもよく、より多段に調整するようにしてもよい。オイルポンプ11の連続非作動時間はエンジンの停止時間に対応するので、この第2所定時間tt2はエンジン停止時間にかかる所定時間tt1よりも大きな値とされる。

また、オイルポンプ11の作動は、電磁クラッチ4が締結し且つエンジンが作動していることから判定することができる。逆に、オイルポンプ11の非作動は、電磁クラッチ4が解放していること及びエンジンが停止していることの少なくとも何れかの状況であるので、このような状況になるとタイマカウントを開始して、オイルポンプ11の作動が判定されるまでは、タイマカウントを続行することにより、オイルポンプ11の連続非作動時間を算出することができる。本実施形態では、原則的にエンジン作動時には電磁クラッチ4が締結するので、オイルポンプ11の連続非作動時間には、エンジンの連続停止時間(エンジン停止時間)を用いている。

また、本実施形態では、オイルポンプのオイルの油温Tempが低いほど、第2必要トルク容量を低下させている。ここでは、油温Tempが低いほど小さくなる1未満の係数(油温対応係数)C2を、検出した油温Tempに基づいて設定し、第2必要トルク容量の基本値にこの係数C2を乗算して第2必要トルク容量を補正するようにしている。本実施形態では、第2必要トルク容量の基本値に係数C1及びC2を乗算して第2必要トルク容量を補正する。なお、オイルポンプのオイルの油温Tempは、例えばオイルパン11b内等に油温センサを装備し、この油温センサにより検出された油温を用いることができる。

なお、オイルの油温Tempが所定油温未満の場合(即ち、オイルの粘度が所定粘度よりも高い場合)には、オイルの温度Tempが所定油温以上の場合(即ち、オイルの粘度が所定粘度以下の場合)よりも第2必要トルク容量を低下させるように、第2必要トルク容量を油温に対しシンプルに2段階に調整するようにしてもよく、より多段に調整するようにしてもよい。

また、オイルの油温に替えて、オイルの周囲雰囲気温度である気温に基づいて、オイルの粘性を判定しても良い。つまり、エンジン停止後ある程度時間が経過するとオイルの油温は周囲の気温と略等しくなるので、エンジン停止後一定時間が経過したことを条件に、気温が低いほど、第2必要トルク容量を低下させるようにする。この場合、気温が低いほど小さくなる1未満の係数(油温対応係数)C3を、検出した気温に基づいて設定し、第2必要トルク容量の基本値にこの係数C3を乗算して第2必要トルク容量を補正するようにする。したがって、この場合は、第2必要トルク容量の基本値に係数C1及びC3を乗算して第2必要トルク容量を補正する。また、気温が所定気温未満の場合には、気温が所定気温以上の場合よりも第2必要トルク容量を低下させるように、第2必要トルク容量を気温に対しシンプルに2段階に調・BR>ョするようにしてもよく、より多段に調整するようにしてもよい。

また、第3の指令部103acは、エンジンの始動時に、第2必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力する前に、第1の指令部103aaによる出力に対するオイルポンプ11の圧力上昇の応答遅れに応じた時間だけ、第2必要トルク容量よりも大きい第3必要トルク容量で電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力する。具体的には、第2の指令値よりも、伝達トルク容量が大きい第3の指令値(初期指示値)を電磁クラッチ4の電流指示ドライバ4Aに出力する。

この初期指示値を電磁クラッチ4に、オイルポンプ11の圧力上昇の応答遅れに応じた時間だけ実施するので、オイルポンプ11の急激な圧力上昇を招くことなく、早く電磁クラッチ4を係合させることができる。このように電磁クラッチ4が係合すると、その後は、電磁クラッチ4の滑りを適宜利用しながら、図5(a)に実線で示す係合から解放へのライン上で、電流調整による電磁クラッチ4の係合トルクの制御を広い範囲で実施することができる。

なお、本実施形態では、供給電流にかかる最終指示値及び初期指示値をいずれも0としており、この場合、電磁クラッチ4による伝達トルクTtは最大とされる。 また、前記容量閾値は電磁クラッチ4の締結時に発生するサージ圧が装置の耐久性に応じた基準値以下となるトルク容量値に設定されている。 クラッチ制御部103は、指令部103aに加えて、判定部103bと推定部103cと補正部103dとを有し、これらにより学習制御を用いて過渡指示値を補正する(換言すれば、第2必要トルク容量を補正する)。また、指令部103aの第3の指令部103acは、特に、クラッチの解放を指示する場合に、指示値をスイープしてクラッチ制御部103の要部に出力するために備えられている。

この第3の指令部103acは、電磁クラッチ4を解放させる時に、伝達トルク容量が0となるように指示値をスイープさせて電磁クラッチ4に出力する。つまり、供給電流にかかる指示値を徐々に増大させて、電磁クラッチ4を0にスイープする。 判定部103bは、電磁クラッチ4を解放させる時に、第3の指令部103acによる指示によって、電磁クラッチ4の伝達トルク容量が0にスイープする際に、オイルポンプ11の回転数Nopとエンジン回転数Neとの関係から電磁クラッチ4が完全締結状態からスリップ状態に移行したことを判定する。

推定部103cは、判定部103bにより電磁クラッチ4が完全締結状態からスリップ状態に移行した時の第3の指令部103acの指示値から、スリップ状態移行時の電磁クラッチ4の伝達トルク容量を推定する。 補正部103dは、推定部103cにより推定された伝達トルク容量に基づいて第2指示値を補正する。なお、補正部103dは、かかる補正を、エンジンのイグニッションオン後の1回目の電磁クラッチ4の解放時に行なう。

<クラッチ制御にかかるタイムチャート> ここで、タイムチャートを参照して、電磁クラッチ4の制御について具体的に説明する。 図6に示すように、エンジンが始動され、電磁クラッチ4を係合することが判定されると(時点t1:電磁クラッチ係合判定オン)、図6(a)に破線で示すように、油圧算出部101では指示圧(目標油圧)をステップ状に上昇させる。これを受けて、伝達トルク容量設定部102では、電磁クラッチ4を完全締結するのに必要な電磁クラッチ4の係合トルクを、指示圧上昇に対応してステップ状に加える(時点t2:係合トルク指示(1))。

このときの係合トルクにかかる指示値(電磁クラッチ4への供給電流)は、図6(d)に実線で示すように、初期指示値(供給電流0)であるが、電磁クラッチ4の実際の係合トルク(O/P駆動トルク)は、図6(b)に実線で示すように応答遅れを持って緩やかに上昇し、オイルポンプ11により発生する実圧も、図6(a)に実線で示すように、同様に応答遅れを持って緩やかに上昇するので、初期指示値を出力する時間を制限すれば、実圧が過剰に上昇することはない。本実施形態では、予め試験等を行なって、オイルポンプ11により発生する実圧は応答遅れの特性を把握して、かかる応答遅れの特性に基づいて初期指示値を出力する時間を一定時間(時点t2〜t3)に制限している。

そして、その後(時点t3)、電磁クラッチ4への供給電流にかかる指示値を、初期指示値から過渡指示値に変更する。過渡指示値は、最終指示値及び初期指示値よりも電磁クラッチ4による伝達トルクTtを抑えられ且つ伝達トルクTtを発生させることができる指示値、つまり、電磁吸引力Fmを付勢機構43による付勢力Fs未満(Fs>Fm)とする指示値であり、前記の式(2)で算出される係合トルクTeに応じた値である。

指示部103aがこの過渡指示値を出力している間に、図6(b)に示すように、実線で示す実際のオイルポンプ駆動トルク(O/P駆動トルク)は、太破線で示す電磁クラッチ4の係合トルクや、細破線で示す指示圧とエンジン回転数から算出される演算トルク(O/P駆動トルク)に到達し(時点t4)、その後オーバシュートし、これにより、図6(c)に実線で示すように、クラッチの滑りが増大することからO/P駆動トルクが減少し、電磁クラッチ4の係合トルクや演算O/P駆動トルクを下回ってクラッチの滑りが低減される動作を繰り返して、電磁クラッチ4の係合トルク及ぶ演算O/P駆動トルクの値に収束する。

同様に、オイルポンプ11により発生する実圧も、図6(a)に実線で示すように、指示圧に到達し、その後指示圧を上下するように脈動を伴いながら、指示圧に収束する。 この実圧の指示圧への収束を判定すると、油圧安定判断フラグをオンし(時点t5)、これを受けて、電磁クラッチ4への供給電流にかかる指示値を、第2要求トルクに応じた過渡指示値から第1要求トルクに応じた最終指示値に切り替え(時点t6)、過渡指示値から最終指示値に緩やかに変更する(図6(d))。本実施形態では、電磁クラッチ4への締結制御開始後(エンジン始動後)予め設定されたサージ圧抑制期間が経過したら、実圧が指示圧への収束したものと判定する。

図7は、電磁クラッチ4を解放しながらトルクばらつきによって劣化学習する制御を説明するものである。図7(a)に細破線で示すように、電磁クラッチ4に指示する係合トルク容量をスイープ(漸減)させていくと、図7(a)に太破線で示すように、電磁クラッチ4の実際の係合トルク容量もスイープ(漸減)していき、電磁クラッチ4の実際の係合トルク容量がオイルポンプ11の駆動トルク(O/P駆動トルク)まで減少すると、図7(a)に実線で示すように、O/P駆動トルクが実際の係合トルク容量の減少に伴って減少し始める。電磁クラッチ4の実際の係合トルク容量の減少によってO/P駆動トルクが減少すると、図7(b)に示すように、O/P回転数がエンジン回転数よりも低くなる(O/P回転数Nop<エンジン回転数Ne)。

このため、「O/P回転数<エンジン回転数」となった瞬間からクラッチ解放開始と判断できる。 また、図7(a)に実線及び太破線で示すように、電磁クラッチ4の解放開始時は、「実際の電磁クラッチ係合トルク=O/Pの駆動トルク」となるので、図8に示すように、クラッチ解放開始時における指示係合トルク(細破線)とO/P駆動トルク(実線)との差に応じて電流−トルクマップを補正することができる。

また、電磁クラッチ4が解放を開始するとやがてスリップ状態から完全解放状態となるが、この完全解放状態への移行はO/P駆動トルクが0となることから判定することができ(実際の判定は、O/P駆動トルクが0となることによりオイルポンプ11の吐出圧が0になることにより行なう)、この完全解放状態への移行時点(図8の点P0)の供給電流の値I0を求めれば、電流−トルクマップを更に補正することができる。

<作用及び効果> 本発明の第1実施形態にかかる油圧機器の制御装置は、上述のように構成されているので、例えば、図9,図10に示すように、オイルポンプの制御が行なわれる。 図9はエンジン始動に伴う電磁クラッチ4の締結にかかる制御を示すフローである。このフローはエンジン停止時に、所定の周期で行なうものである。図9に示すように、キースイッチ操作からエンジンスタート指示があるかを判定する(ステップA10)。エンジンスタート指示があれば、次に、次に、第1必要トルク容量を算出して(ステップA12)、電磁クラッチ4を解放指示する(ステップA20)。

第1必要トルク容量は、エンジンの作動中に、変速機用油圧装置の作動に必要な吐出圧を達成するトルク容量であり、電磁クラッチ4が締結するように電磁クラッチ4に指令を出力する。具体的には、伝達トルク容量設定部102により設定された伝達トルク容量に応じた第1の指令値である電流指示値(最終指示値)を電磁クラッチ4の電流指示ドライバ4Aに出力する。この電磁クラッチ4の解放は、電磁クラッチ4の供給電流を制御する電流指示ドライバ4Aに、一定以上の供給電流指示値(例えば、最大指示値)を出力することにより行なう。

次に、エンジン停止期間(オイルポンプの連続非作動時間)が所定時間tt1以上であるかを判定し(ステップA30)、ここで、エンジン停止期間が所定時間tt1未満であれば、第1必要トルク容量で電磁クラッチ4の締結指示をする(ステップA100)。一方、エンジン停止期間が所定時間tt1以上であれば、第2必要トルク容量を算出する(ステップA40)。

この第2必要トルク容量は、サージ圧の発生のおそれが高い状況ほどを低く設定する。つまり、オイルポンプ11の連続非作動時間が長いほど第2必要トルク容量を低下し、オイルポンプ11のオイルの油温が低いほど第2必要トルク容量を低下する。具体的には、算出した連続非作動時間に基づいて、連続非作動時間が長いほど小さくなる1未満の係数(非作動時間対応係数)C1を設定し、検出した油温Tempに基づいて油温Tempが低いほど小さくなる1未満の係数(油温対応係数)C2を設定し、第2必要トルク容量の基本値に係数C1及びC2を乗算して第2必要トルク容量を補正する。

そして、エンジンを始動させる(ステップA50)。つまり、スタータモータを起動させてエンジンの燃焼を開始する。その後、エンジン回転数を完爆判定の基準値Re1と比較して(ステップA60)、エンジン回転数が基準値Re1以上になったら、エンジンが完爆した、即ち、始動完了と判定する。 エンジンの始動が完了したら、第2必要トルク容量で電磁クラッチ4の締結指示をする(ステップA70)。また、第2必要トルク容量で電磁クラッチ4の締結指示をする前に、微小期間だけ第3必要トルク容量で電磁クラッチ4の締結指示をする。

この締結指示の開始と同時に、カウントアップを開始して(ステップA80)、カウント数が所定値C1に達したかを判定し(ステップA90)、カウント数が所定値(サージ圧抑制期間に対応する値)C1に達したら、すなわち、サージ圧抑制期間が経過したら第1必要トルク容量で電磁クラッチ4の締結指示をする(ステップA100)。 したがって、本制御装置によれば、エンジンの作動中には、変速機用油圧装置の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するように電磁クラッチ4に指令を出力するので、変速機用油圧装置を確実に作動させることができ、所定時間以上停止した後のエンジンの通常始動時には、第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で締結するように電磁クラッチ4に指令を出力するので、エンジンが過大なトルクを出力しても、エンジンの回転数が過大になっても、電磁クラッチ4が滑りオイルポンプ11の回転数の急上昇が抑えられ、オイルポンプ11の油圧の急上昇(いわゆる、サージ圧)を抑制することができる。これにより、油圧負荷による耐久性低下を抑制することができる。

また、アイドルストップのような短時間でエンジンを再始動する場合には、変速機用油圧装置内やオイルポンプ11内にオイルが残存しており、サージ圧は発生しないか発生しても変速機用油圧装置の各部に大きな負担を与えないが、この場合、始動当初から第1必要トルク容量で締結するように電磁クラッチ4に指令を出力することにより、不要なサージ圧の抑制対策による油圧の立ち上がりの遅れを回避することができる。

オイルポンプ11の連続非作動時間が長いほど、変速機用油圧装置内やオイルポンプ11内のオイルが減少するので、オイルポンプによるサージ圧の影響が変速機用油圧装置の各部により大きな負担となる。また、気温が低い場合などには油温が低くなるほど、オイルの粘性が高くなり、オイルポンプによるサージ圧が発生すると、変速機用油圧装置の各部により大きな負担となる。

このような場合に、オイルポンプ11の連続非作動時間の長さや油温の低さに応じて第2必要トルク容量を低下させるので、クラッチの滑りが促進されオイルポンプによるサージ圧の発生がより抑えられ、変速機用油圧装置の各部の負担を軽減しその耐久性低下を抑制することができるようになる。 図10はエンジン停止に伴う電磁クラッチ4の解放制御と、この時の電磁クラッチ4のトルク挙動から電磁クラッチ4の劣化を学習する制御とを説明するフローチャートである。このフローはエンジン作動中に、所定の周期で行なうものである。図10に示すように、まず、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止指示があったかを判定する(ステップB10)。なお、この判定は、ドライバによるエンジン停止操作に対しては行なわない。

次に、運転開始後(つまり、、ドライバによるエンジン始動後)、1回目のエンジンの自動停止であるか否かが判定される(ステップB20)。ここで、1回目のエンジンの自動停止であれば、電磁クラッチ4の劣化学習制御を実施してから(ステップB30〜B80)、エンジンの自動停止制御を開始する(ステップB90)が、2回目以降のエンジンの自動停止であれば、電磁クラッチ4の劣化学習制御を実施せずに、エンジンの自動停止制御を開始する(ステップB90)。

このように、1回目のエンジンの自動停止のみ電磁クラッチ4の劣化学習制御を実施するのは、劣化学習制御を行なうとエンジンの自動停止に時間を要し、その分だけ燃費節約を促進できないためこの燃費節約に観点と、クラッチの劣化が急激に進むことはないので学習制御の頻度を増やす必要もなく、運転開始後から運転終了までの間、1回だけ行なえば十分であるとの考えとに基づいている。

1回目のエンジンの自動停止であれば、エンジンを自動停止する前に、まず、電磁クラッチ4の解放制御を開始する(ステップB30)。この時のクラッチ解放制御では、電磁クラッチ4への供給電流を徐々に(緩やかに)上昇させていき、クラッチを解放状態に移行させる(伝達トルク容量を0にスイープさせる)。このように供給電流を緩やかに上昇させていくと、その途中で、電磁クラッチ4にスリップが発生する。そこで、このスリップの開始を判定する(ステップB40)。このスリップの開始は、判定部103bにおいて、オイルポンプ11の回転数Nopがエンジン回転数Neよりも低くなった(Nop

そして、このスリップの開始判定時の電磁クラッチ4の伝達トルク容量を推定する(ステップB50)。この推定は、推定部103cにおいて、判定部103bにより電磁クラッチ4が完全締結状態からスリップ状態に移行した時の指示部103aの指示値から、スリップ状態移行時の電磁クラッチ4の伝達トルク容量を推定する。 さらに、この伝達トルク容量の推定値からクラッチ締結電流とトルクとのマップを修正する(ステップB60)。つまり、図8に示すように、クラッチ解放開始時における指示係合トルク(細破線)とO/P駆動トルク(実線)との差に応じて電流−トルクマップを補正する。

その後、電磁クラッチ4がスリップ状態から完全解放状態に移行したか否かを判定する(ステップB70)。つまり、電磁クラッチ4への供給電流が上昇していくと、電磁クラッチ4はある時点でスリップ状態から完全解放状態に移行するのでこれを判定する。電磁クラッチ4が完全解放状態に移行したことは、O/P駆動トルクが0、つまり、オイルポンプ11の吐出圧が0となることから判定することができる。

そして、この完全解放状態に移行したことが判定された時点(図8の点P0)の供給電流の値i0から、電流−トルクマップを更に補正する(ステップB80)。これにより、電流−トルクマップの精度が一層向上する。 その後、エンジンの自動停止制御を開始する(ステップB90)。 そして、エンジンの停止をエンジン回転数Neから判定して(ステップB100)、エンジンが停止したら、電磁クラッチ4が解放状態か否かを判定する(ステップB110)。このときの電磁クラッチ4の解放状態とは、電磁クラッチ4に電流が送られている状態に相当し、電磁クラッチ4が解放状態であれば、電磁クラッチ4の締結を指示して(ステップB120)この制御を終える。つまり、ノーマルクローズタイプの電磁クラッチ4への電流供給を停止してこの制御を終える。また、電磁クラッチ4が解放状態、即ち、電流供給停止状態であれば、そのままこの制御を終える。これにより、エンジン停止時には、電磁クラッチ4への電流供給が停止され、電力消費が抑制される。

このエンジン停止に伴う制御により、電流−トルクマップの精度が一層向上するため、その後のクラッチ締結制御をより精度よく行なうことができる。 〔第2実施形態〕 <装置構成> まず、図11を参照して、本実施形態にかかる油圧機器及びその制御装置の構成を説明する。なお、図11において、図1に示す第1実施形態と同符号のものは図1と同様のものを示し、これらの説明は省略し、第1実施形態と異なる点を説明する。

図11に示すように、本実施形態も、本油圧機器は、車両に搭載された無段変速機(CVT)のプライマリプーリ及びセカンダリプーリの可動プーリの油圧室等に油圧を供給する変速機用油圧装置であり、第1実施形態のクラッチが電磁クラッチ4であるのに対して、本実施形態のクラッチは油圧によって締結及び解放を操作する油圧クラッチ140が用いられている。

第1実施形態の電磁クラッチ4は供給電流指示ドライバ4Aによって制御されて作動するが、本実施形態の油圧クラッチ140は、油圧源141又はオイルポンプ11からのオイルを油圧コントロールユニット7によって供給を制御されて作動する。また、第1実施形態の電磁クラッチ4がノーマルクローズタイプであるのに対して、本実施形態の油圧クラッチ140は、油圧を供給されないと解放するノーマルオープンタイプのものになっている。ここでは、油圧クラッチ140の詳細は図示しないが、油圧を抜くと、リターンスプリングによりクラッチが解放し、リターンスプリングに抗して油圧を与えると、クラッチが締結する構成になっている。

油圧クラッチ140を作動させる油圧は、オイルポンプ11の停止時にも必要となるので、オイルポンプ11とは別の油圧源141が用意されているが、この油圧源141は、オイルポンプ11からの加圧オイルを蓄圧するアキュムレータ若しくはオイルポンプ11とは別の電動オイルポンプを適用することができる。油圧源141はオイルポンプ11が作動するまで用いられるだけで、このとき必要オイル供給量は少ないので、アキュムレータや電動オイルポンプは小容量のもので対応可能と考えられる。

油圧クラッチ140は、ノーマルオープンタイプであるため、エンジン停止時には、油圧供給がされず解放状態となる。したがって、第1実施形態の電磁クラッチ4のように、エンジン停止時に締結されるノーマルクローズタイプの場合には、エンジン始動時に、一旦解放操作することが必要であるが、油圧クラッチ140の場合はこの解放操作が不要となる。

このように、本実施形態の場合には、油圧クラッチ140への供給油圧を制御するので、第1実施形態の電流−トルクマップに替えて、例えば図12に示すような制御油圧−トルクマップが適用される。この制御油圧−トルクマップは、電流−トルクマップの電流が制御油圧に替わり、制御油圧の増減方向が電流図の増減方向と逆になる。 これらの点以外は、第1実施形態と同様に構成される。

<作用及び効果> 本発明の第2実施形態にかかる油圧機器の制御装置は、上述のように構成されているので、例えば、図13,図14に示すように、オイルポンプの制御が行なわれる。 図13はエンジン始動に伴う油圧クラッチ140の締結にかかる制御を示すフローである。このフローはエンジン停止時に、所定の周期で行なうものである。図13に示すように、キースイッチ操作からエンジンスタート指示があるかを判定する(ステップC10)。エンジンスタート指示があれば、次に、第1必要トルク容量を算出する(ステップC20)。なお、本油圧クラッチ140はノーマルオープンなので解放指示の必要はない。

次に、エンジン停止期間(オイルポンプの連続非作動時間)が所定時間tt1以上であるかを判定し(ステップA30)、ここで、エンジン停止期間が所定時間tt1未満であれば、第1必要トルク容量で油圧クラッチ140の締結指示をする(ステップC100)。一方、エンジン停止期間が所定時間tt1以上であれば、第2必要トルク容量を算出する(ステップC40)。

この第2必要トルク容量は、サージ圧の発生のおそれが高い状況ほどを低く設定する。つまり、オイルポンプ11の連続非作動時間が長いほど第2必要トルク容量を低下し、オイルポンプ11のオイルの油温が低いほど第2必要トルク容量を低下する。具体的には、算出した連続非作動時間に基づいて、連続非作動時間が長いほど小さくなる1未満の係数(非作動時間対応係数)C1を設定し、検出した油温Tempに基づいて油温Tempが低いほど小さくなる1未満の係数(油温対応係数)C2を設定し、第2必要トルク容量の基本値に係数C1及びC2を乗算して第2必要トルク容量を補正する。

そして、エンジンを始動させる(ステップC50)。つまり、スタータモータを起動させてエンジンの燃焼を開始する。その後、エンジン回転数を完爆判定の基準値Re1と比較して(ステップC60)、エンジン回転数が基準値Re1以上になったら、エンジンが完爆した、即ち、始動完了と判定する。 エンジンの始動が完了したら、第2必要トルク容量で油圧クラッチ140の締結指示をする(ステップC70)。また、第2必要トルク容量で油圧クラッチ140の締結指示をする前に、微小期間だけ第3必要トルク容量で油圧クラッチ140の締結指示をする。

この締結指示の開始と同時に、カウントアップを開始して(ステップC80)、カウント数が所定値C1に達したかを判定し(ステップC90)、カウント数が所定値(サージ圧抑制期間に対応する値)C1に達したら、すなわち、サージ圧抑制期間が経過した、変速機用油圧装置の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するように油圧クラッチ140の締結指示をする(ステップC100)。

したがって、本制御装置によれば、エンジンの作動中には、変速機用油圧装置の作動に必要な吐出圧を達成する第1必要トルク容量で締結するように油圧クラッチ140に指令を出力するので、変速機用油圧装置を確実に作動させることができ、所定時間以上停止した後のエンジンの通常始動時には、第1必要トルク容量よりも所定量低下させた第2必要トルク容量で締結するように油圧クラッチ140を制御するので、エンジンの出力トルクや回転数が過大であっても、油圧クラッチ140が滑りオイルポンプ11の回転数の急上昇が抑えられ、オイルポンプ11の油圧の急上昇(いわゆる、サージ圧)を抑制することができる。これにより、油圧負荷による耐久性低下を抑制することができる。

また、アイドルストップのような短時間でエンジンを再始動する場合には、変速機用油圧装置内やオイルポンプ11内にオイルが残存しており、サージ圧は発生しないか発生しても変速機用油圧装置の各部に大きな負担を与えないが、この場合、始動当初から第1必要トルク容量で締結するように油圧クラッチ140に指令を出力することにより、不要なサージ圧の抑制対策による油圧の立ち上がりの遅れを回避することができる。

オイルポンプ11の連続非作動時間が長いほど、変速機用油圧装置内やオイルポンプ11内のオイルが減少するので、オイルポンプによるサージ圧の影響が変速機用油圧装置の各部により大きな負担となる。また、気温が低い場合などには油温が低くなるほど、オイルの粘性が高くなり、オイルポンプによるサージ圧が発生すると、変速機用油圧装置の各部により大きな負担となる。

このような場合に、オイルポンプ11の連続非作動時間の長さや油温の低さに応じて第2必要トルク容量を低下させるので、クラッチの滑りが促進されオイルポンプによるサージ圧の発生がより抑えられ、変速機用油圧装置の各部の負担を軽減しその耐久性低下を抑制することができるようになる。 図14はエンジン停止に伴う油圧クラッチ140の解放制御と、この時の油圧クラッチ140のトルク挙動から油圧クラッチ140の劣化を学習する制御とを説明するフローチャートである。このフローはエンジン作動中に、所定の周期で行なうものである。図14に示すように、まず、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止指示があったかを判定する(ステップD10)。なお、この判定は、ドライバによるエンジン停止操作に対しては行なわない。

次に、運転開始後(つまり、、ドライバによるエンジン始動後)、1回目のエンジンの自動停止であるか否かが判定される(ステップD20)。ここで、1回目のエンジンの自動停止であれば、油圧クラッチ140を緩やかに解放する第2のクラッチ解放制御を実施しながら劣化学習制御を実施し(ステップD30〜D90)その後、エンジンの自動停止制御を開始する(ステップD100)。一方、2回目以降のエンジンの自動停止であれば、油圧クラッチ140を直ちに解放する第1のクラッチ解放制御を実施して(ステップD40)、エンジンの自動停止制御を開始する(ステップD100)。

このように、1回目のエンジンの自動停止のみ油圧クラッチ140の劣化学習制御を実施するのは、第1実施形態と同様であり、劣化学習制御を行なうとエンジンの自動停止に時間を要し、その分だけ燃費節約を促進できないためこの燃費節約に観点と、クラッチの劣化が急激に進むことはないので学習制御の頻度を増やす必要もなく、運転開始後から運転終了までの間、1回だけ行なえば十分であるとの考えとに基づいている。

1回目のエンジンの自動停止であれば、エンジンを自動停止する前に、まず、油圧クラッチ140を緩やかに解放する第2のクラッチ解放制御を開始する(ステップC30)。この時のクラッチ解放制御では、油圧クラッチ140への供給油圧を徐々に(緩やかに)減少させていき、クラッチを解放状態に移行させる(伝達トルク容量を0にスイープさせる)。このように供給油圧を緩やかに減少させていくと、その途中で、油圧クラッチ140にスリップが発生する。そこで、このスリップの開始を判定する(ステップD50)。このスリップの開始は、判定部103bにおいて、オイルポンプ11の回転数Nopがエンジン回転数Neよりも低くなった(Nop

そして、このスリップの開始判定時の油圧クラッチ140の伝達トルク容量を推定する(ステップB50)。この推定は、推定部103cにおいて、判定部103bにより油圧クラッチ140が完全締結状態からスリップ状態に移行した時の指示部103aの指示値から、スリップ状態移行時の油圧クラッチ140の伝達トルク容量を推定する。 さらに、この伝達トルク容量の推定値からクラッチ締結油圧とトルクとのマップを修正する(ステップD70)。つまり、クラッチ解放開始時における指示係合トルク(細破線)とO/P駆動トルク(実線)との差に応じて制御油圧−トルクマップを補正する。

その後、油圧クラッチ140がスリップ状態から完全解放状態に移行したか否かを判定する(ステップD80)。つまり、油圧クラッチ140への供給油圧が減少していくと、油圧クラッチ140はある時点でスリップ状態から完全解放状態に移行するのでこれを判定する。油圧クラッチ140が完全解放状態に移行したことは、O/P駆動トルクが0となり、オイルポンプ11の吐出圧が0になることから判定することができる。

そして、この完全解放状態に移行したことが判定された時点の供給油圧の値から、制御油圧−トルクマップを更に補正する(ステップD90)。これにより、制御油圧−トルクマップの精度が一層向上する。 その後、エンジンの自動停止制御を開始する(ステップD100)。 そして、エンジンの停止をエンジン回転数Neから判定して(ステップD110)、エンジンが停止したら、この制御を終える。

このエンジン停止に伴う制御により、制御油圧−トルクマップの精度が一層向上するため、その後のクラッチ締結制御をより精度よく行なうことができる。

<その他> 以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を適宜変更して実施することができる。 例えば、上記実施形態では、電磁クラッチを、電流供給しない場合に締結するノーマルクローズのものとしたが、ノーマルオープンの電磁クラッチを適用してもよく、また、油圧クラッチに油圧供給しない場合に解放するノーマルオープンのものとしているが、ノーマルクローズの油圧クラッチを適用してもよく、クラッチの種類や方式が限定されるものではない。

また、上記実施形態では油圧がCVTに適用される例を示したが、油圧は車載の何れの装置にも適用でき、また、車載の油圧機器に限らず、油圧機器に広く適用しうる。

1 エンジンの出力軸 2 電動モータ 3 チェーン機構 4 ポンプクラッチ(電磁クラッチ) 4A 電流指示ドライバ 5 トルクコンバータ 6 CVT 7 油圧コントロールユニット 10 CVTCU〔CVTコントロールユニット(制御手段)〕 11 オイルポンプ 41 ポンプシャフト 42 アーマチュア 42a 摩擦面 43 付勢機構 44 電磁吸引機構 45 カム機構 61 プライマリ軸 62 プライマリプーリ 63 セカンダリ軸 64 セカンダリプーリ 65 ベルト(チェーンも含む) 66a,66b 油圧室 101 油圧算出部 102 伝達トルク容量設定部 103 クラッチ制御部 103a 指令部 103aa 第1の指令部 103ab 第2の指令部 103ac 第3の指令部 103b 判定部 103c 推定部 103d 補正部 140 油圧クラッチ 141 油圧源